JCCLS 特定非営利活動法人 日本臨床検査標準協議会  
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日本臨床検査標準協議会(JCCLS)とは    
       
 

会長就任挨拶―臨床検査の標準化―

 

濱ア 直孝(長崎国際大学薬学部教授、九州大学名誉教授)

この度、特定非営利活動法人日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の会長に就任させていただいた濱ア直孝です。微力ながら臨床検査の標準化に全力を尽くしてゆきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
科学が急速に発展した20世紀以降、経験だけではなく科学的にも医療を行う環境が徐々に整備されてきました。臨床検査医学はそのような動きの中心となって、エビデンスに基づく科学的医療を推し進めてきた学問領域の一つです。臨床検査医学は生体成分を化学的・物理的・生物学的に分析し、ヒトの健康状態を推し量る学問領域です。臨床検査医学領域で、現在、解決しなければならない大きな問題があります。それは分析方法や分析結果の標準化に関する問題です。我国では、臨床検査測定値の精度管理は重要な問題として、臨床検査関係者が長年取り組んできている課題です。その結果、日本の臨床検査測定精度レベルは高く維持されています。しかしながら、「臨床検査測定値はそれぞれの病院に特有なものであり、患者が転院すれば再検査を行うのは当然で、以前の検査データを利用できない。」この状態は、残念ながらまだ解消できておりません。 
科学的な医療を行うにあたっては、普遍化された臨床検査の標準化とデータベース化は早急に整備しなければならない重要な問題点です。そのような観点から、JCCLSは2003年に「臨床検査標準化基本検討委員会」を発足させ、標準化活動のより一層の推進を図りました。その活動の柱は、(1)標準物質の整備(柱1)、(2)臨床検査測定値の標準化(施設間較差是正)(柱2)、(3)データベース化と診断・治療指針の標準化(柱3)になります。臨床検査項目には膨大な項目数があり、日常の医療に頻用されている検査項目だけでも数百項目あるといわれております。物理計量標準の例を見るまでもなく、標準化の基本は標準物質を整備しそれに対するトレーサビリティ体系の確立です。項目が多い臨床検査の領域では、標準物質の整備(柱1)はほぼ永久に続く活動になります。我国の計量標準の総元締めである産業技術総合研究所と協力して息長く地道に続けてゆかねばならない活動です。
しかしながら、標準物質の整備が完了するまで臨床検査測定値の標準化を放置しておくことはできません。標準物質の整備ができていない状態でも臨床検査測定値の標準化は科学的医療には必須の要因です。そのギャップを埋めるポイントとなるものが、“常用参照標準物質”です。常用参照標準物質とは、@厳密な意味での標準物質ではないが、Aその時点で標準物質に一番近い物質のことです。このような物質であれば、数百、数千項目あろうとも、大半の検査項目に常用参照標準物質を設定することは可能になります。そのような常用参照標準物質に臨床検査関係者が総意で値を付け、その常用参照標準物質を基準としてトレーサビリティ体系を確立・維持すれば、少なくとも、その時点での、臨床検査測定値の標準化(施設間較差是正)(柱2)は可能になります。常用参照標準物質をできる限り厳密に作製・記録・管理保管しておけば、次の世代へも値の伝達は可能であり、次世代へのトレーサビリティ体系の継承も可能です。このような常用参照標準物質の整備は、JCCLSのような組織で行わなければできない活動です。産業技術総合研究所の助言を受けながら常用参照標準物質を整備してゆくのが、JCCLSの重要な役割と考えております。
一方、常用参照標準物質の整備だけで、臨床検査測定値の標準化(施設間較差是正)(柱2)が完成するわけではありません。常用参照標準物質を基準としてトレーサビリティ体系の国内的なネットワーク作りがもう一つの重要なポイントになります。この活動は日本医師会、日本臨床衛生検査技師会との共同作業で整備してゆく必要があります。この施設間較差是正の活動はこれまで地域の医師会、日本臨床衛生検査技師会が協力して長年に亘って活動されてきた実績があります。このような活動との連携を旨く図る必要があります。標準化基本検討委員会柱2活動の一部を担う形で、日本臨床衛生検査技師会が、常用参照標準物質を基準としてトレーサビリティ体系の国内的なネットワーク作りに、平成19年度から、組織を挙げて取り組んでいただいております。日本臨床衛生検査技師会、日本医師会とJCCLSとの協調な活動で、恒久的な国内トレーサビリティ体系の確立を目指してゆく必要があります。
厚生労働省が本年4月から開始した、特定健診・保健指導とメタボリックシンドローム診断基準は、臨床検査の標準化には非常なインパクトを与えております。言うまでもなく、適切な保健指導を行うためには基準が適切でなければならず、検査項目は標準化され、標準化されたデータベースに基づいて適切な診断基準がなされていることが必須です。メタボリックシンドローム関連検査項目については、幸いなことに、これらの条件は満たしておりましたが、このような要因整備は、全ての疾病について整備しておく必要があります。臨床検査の標準化・データベース化は、我々が取り組み、早急に整備しなければならない最重要課題であると考えております。
最後になりましたが、我々の臨床検査標準化活動に対して、長年に亘ってご理解・ご支援を頂いている厚生労働省、また、計量標準の視点で、最近、我々の活動を強力に支えて頂いております経済産業省に心より感謝の気持ちと御礼を申し上げます。これからもご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。

 
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